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フリーラジカル
1993年7月1日号 No.132
ふつうの分子ではその最も外側を回っている電子は、2個が対になって回っています。 フリーラジカルとは、"対になっていない電子を持つ原子や分子"のことです。 最近、色々な疾患とフリーラジカルとの関連が話題になっています。
{参考文献}薬の知識 Mar.1993 ,Vol.44,No.3
生体でのフリーラジカルの発生機序として重要な機構は、好中球などのいわゆる食細胞の膜の中に存在するNADPHオキシダーゼの活性化です。食細胞の重要な機能である殺菌を遂行するため食細胞は、活性化され種々の活性酵素が発生します。
この好中球を刺激する物質としては、細菌のほかに免疫複合体、各種サイトカインなどが挙げられ、発生した活性酸素は、細菌以外ではほとんど炎症時の増悪因子となっています。
もう一つの重要な活性酸素の発生機序は虚血です、虚血時には、ヒポキサンチンやキサンチンオキシダーゼが増加し、この両者によって尿酸が発生するとき同時に酸素から活性酸素の一つであるスーパーオキシダーゼが産生されます。
生体では種々のバランスのとれた生理的反応が営まれています。これらの生理的現象の調節因子としてフリーラジカルが重要な働きをしていることが判明してきました。その代表的なものは微小循環血管透過性、血管拡張及び収縮、血圧、神経分泌などの調節です。
とりわけ注目されているのは、血管内皮由来血管弛緩因子(EDRF)である一酸化窒素(NO)です。このNOはフリーラジカルであり、大気中では有害な化学物質ですが、生体内では微量で有益な反応をしています。血管を拡張させて血圧をコントロールし、免疫反応では侵入外敵を殺し、陰茎の勃起を調節し、記憶の維持に携わっています。
生体内はこのフリーラジカルを消去するための抗酸化剤を持っています。しかしこの抗酸化能力を超えて大量にフリーラジカルが発生すると、その最も近くに存在する物質は障害を受けます。脂質、蛋白酵素、DNAなどで容易に細胞機能が損傷を受け、種々の疾患が発生します。(下記参照)
癌、老化、動脈硬化、脳・心臓疾患などの成人病は、フリーラジカルの発生を抑制、消去することによって予防や増悪阻止が可能です。
抗酸化ビタミン(C,E、βカロチンなど)を多く含む緑黄野菜を多く取ると疾患の予防に有効です。
<フリーラジカルの関与する疾患>
パーキンソン病、脳梗塞、白内障、てんかん、脊髄損傷、動脈硬化、未熟児網膜症 腎障害、消化性潰瘍、膵炎、潰瘍性大腸炎、心筋梗塞、成人呼吸窮迫症候群、肺気腫
慢性関節リウマチなどの膠原病、血管炎、浮腫、糖尿病合併症、紫外線障害、高山病 ポルフィリン血症、熱傷、凍傷、接触性皮膚炎、ショック、多臓器不全、DIC 癌、老化など
<外部からのフリーラジカル>
紫外線、放射線、超音波 抗癌剤〜ブレオ、アドリアシン、マイトマイシンC、ランダ、ネオカルチノスタチン等 除草剤(パラコート等)、殺虫剤、消毒剤、大気汚染物質、タバコ等
関連項目:スカベンジャー/スカベンジャー理論
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SOD
superoxide dismutase 超酸化物不均化酵素
活性酸の一つ,スーパーオキシド不均化酵素ともいわれスーパーオキシドを消去する以下の反応を触媒します。 2O2−+2H+→H2O2+O2
NOが、活性酸素(スーパーオキシド)と相互作用し、ペルオキシ亜硝酸(パーオキシナイトライト)を作り、脂質や蛋白の過酸化(パーオキシデーション)を起こすことが、知られるようになり、その意味でNOSとSODのクロスストロークは重要な課題です。
フリーラジカルスカベンジャーの生理的意義
出典:三菱東京資料(ラジカット注)
脳は他の臓器に比し酸素消費量が高く、虚血に対し非常に脆弱な臓器です。また細胞膜脂質に不飽和脂肪酸を多く含むため、脳血栓症、脳塞栓症により虚血が生じた場合、フリーラジカル(O2−、・OH)による酸化的攻撃を受けやすくなっています。
脳虚血時とその後の血流再開通後の細胞障害にフリーラジカルの関与が考えられています。正常な脳の血管内皮細胞あるいは脳神経細胞では、SOD(superozide dismutase )、カタラーゼ、ビタミンE、ビタミンCなどの生体内ラジカル消去物質がフリーラジカル適切に無毒化しています。しかし、虚血状態ではAA(アラキドン酸)代謝系の活性化等によってフリーラジカルの産生が増加する結果、過剰の・OH(ハイドロキシラジカル)により膜脂質中の不飽和脂肪酸の過酸化反応が開始されます。
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